2012年4月21日 子供が産まれるまで-7

親父の一番長くない日の話。

■出産予定日とは
一般的に出産は「40週目」とされていて、その日が「出産予定日」となるのですが、
トラブルさえなければ、意外にも予定日周辺に産まれるケースがほとんどなんだそうです。
ということで、39週目からはその日がいつ来ても良いように準備。
病院に持って行く荷物を玄関にまとめて、タクシー会社への電話番号を登録、
あとは冷蔵庫の中の野菜を消費したりとか。嫁が一番熱心だったのはこれでした。笑

■前駆陣痛
予定日の1週間前に、初の陣痛が来ました。
一般的には、最初は約10分間隔で10秒程度痛くなり、それが徐々に間隔が短くなるのですが、
今回は不規則に数十分おきに数回痛んだ程度。
これは「前駆陣痛」と呼ばれるもので、出産直前の陣痛とは別の物でした。
もっとも極まれに前駆陣痛だと思っていた者が本陣痛の場合もあるようです。

前駆陣痛は実際に出産した日の7日前と6日前に起こりましたが、その後はしばらく現れず、
一般的に初産は予定日を過ぎるケースも多いとのことなので、
これはうちもだいぶ遅れるかな…というムードに。

■本陣痛開始か
しばらく経ち、ついに陣痛らしきものが来ました。
最初は10分程度痛み続き、その後30分以上も次の痛みが来なかったので、また前駆陣痛かと思ったのですが、
2回目以降は13分、8分、5分、5分、8分、9分、5分、5分という間隔。
一般的なルールとして、陣痛の間隔が10分になったら病院に連絡し、5分になったら病院に行くというのが有名で、
うちがかかっている病院もそのルールになっていました。

しかしこれだといつ行けばいいかわからない。
しかもこれまで前駆陣痛を経験しているので、これも前駆陣痛かもしれないと思ってしまうのです。
陣痛と勘違いして前駆陣痛で病院に行き、帰らされたなんて体験談は妊娠系の雑誌で必ず載るようなよくある話なので、
嫁は最初かなり躊躇していました。

結局13分、8分、5分の時点で僕の判断で「陣痛間隔10分」の電話をしました。
しかし次の「5分間隔になったら」がまた分かりにくい。
そもそも最初は陣痛の「終わり」が分からないので、1回分なのか2回繋がってるのかもわかりません。
実際は細かい数字も含めて、その後の陣痛間隔は
13分、8分、4:40、5:20、8:20、8:40、4:40、5:00、16:40、6:40、4:00、4:40、4:30、4:30…となりました。
嫁はまだ判断しかねていましたが、僕の判断で、ここで病院に連絡。
あまりの痛さから、間隔が変わったことには気づいておらず、
また最初の陣痛開始からの時間も把握していなかったのだろうと思います。

■病院へ
さて、病院に連絡したのであとは移動…
と簡単に書いたものの、実はこの時ちょうど深夜でした。
タクシーで行くことにしており、複数のタクシー会社に連絡する準備をしていたのですが、
なんと全社とも、空いているタクシーが無いというのです!

うちは自家用車が無いので、電車もバスもない時間にこれは困ります。
全社だめと分かった後で、再び粘り強く話したところ、
正確には「空いているタクシーが無い」のではなく「そもそもタクシーが無い」ということが判明。
台数が無いというのは、向こうとしては恥ずかしいことだと思い、言い回しを変えていたようです。
ここは僕の質問力が生きたと言えるでしょう。
さらに、タクシーは正確には「無い」のではなく、「近くに無い」ということが判明。
事情を話し、少し遠い場所にいたタクシーを30分かけて廻してもらえることになりました。

■入院1日目
こうして病院に到着。
陣痛間隔は相変わらず4分~5分のまま。完全に「5分間隔」というやつになっています。
また、診察の結果、子宮口は1cm程度とのこと。これが10cm程度になると赤ちゃんが出て来れます。
ちなみに産婦人科は、うちからの近さ(普段の通院の通いやすさ)を優先したこともあり、小さい病院なのですが、
偶然にも他に既に2人もお産直前の人がおり、1人はうちの入院の6時間後くらいに出産。
もう1人は途中で陣痛がなくなって帰らされていました。

陣痛が始まってから出産までは、平均で15時間程度と言われています。
一番困ったのが、今回は夜に寝ようとした頃に陣痛が始まったため、最後に寝たのが前日ということ。
かなり眠い状態だったので、とにかく嫁の体力が心配でした。もちろん僕も寝ていません。

旦那は特にできることは無いので、寝ておくのが良さそうに思えますが、
自分も嫁と同じく寝ないでおくことで、嫁の環境を少しでも体感することにしました。
別に「苦しみを共有する」とかいう非科学的な意図ではありません。

■陣痛のがし
5分に1回の陣痛を耐えるために、妊婦は様々な方法を採ります。特に体勢・姿勢は重要。
嫁はそれまで5分毎の陣痛のたびにベッドに座る体勢を取ることで和らげていたのですが、
入院から3時間程度で徐々に痛みに耐えることへの限界が来ているように見られました。
もちろん痛みは徐々に強くなるものですが、それ以外に眠気による混乱もあるだろうと判断。
痛くない時は横になるよう提案しました。
部屋を暗くすると、嫁はすぐに寝てしまいました。
陣痛が来るたびに起きてはしまうのですが、なんとこれまで陣痛の間隔が4~5分だったのが、ここで急に6分に変化。
6分毎に1分痛むのですが、残り5分で眠れます。
この方法でしばらくやり過ごしました。

■経過
やがて朝食。長期戦なので栄養は絶対に必要。嫁は頑張って食べました。
病院食は嫁の分しか出ないので微妙に僕が地獄ですが、そう言う状況ではありませんでした。
嫁の眠気が大分和らいだので、一度ベッドから起きて歩行や屈伸などの運動を提案。
陣痛前でもそうなのですが、運動することでお産は進みやすくなると考えられています。
その後、入院から5時間後で2回目の診察。子宮口は2cm。
予想通りではあるのですが、まだまだ時間がかかることが分かりました。

ここからしばらくは、陣痛の間隔が4分半~5分半に。
入院前後と比べると若干長くなっているのですが、
そういうことを言っても嫁には負担にしかならないので伏せます。
但しこれまでと違い、陣痛の2回に1回ほど、これまでより強いものが来るようになります。
僕にできることは限られていますが、それでも励ましたり、話しかけて気を紛らわせたり、マッサージするなど色々あります。
但し使い分けがとても難しい。
陣痛が来ている時に触ったり、くだらないことを言うと嫌がられます。これは大抵の妊婦さんは同じようです。
陣痛が来ていない時は、色々試しましたが、
足をマッサージされるのが一番良かったようなのでずっとやっていました。
後から考えるとこれはどう考えても出産には関係ありません。

入院から8時間後、3度目の診察。子宮口はまだ2cmと言われ、これも平均的な進み方だとは思うのですが、
ほとんど進んでいないという事実はやはり嫁には辛いようです。
長期戦になることは確定的なので、再び部屋を暗くして、少し休んでもらいました。
軽く判断しているようですが、当事者にとってこれは非常に難しい「賭け」になります。
運動した方がお産が進むと分かっていながら、運動しないという選択肢を取るからです。
実際、これを境に陣痛の間隔は5分半~7分半に。
僕も眠くて頭が廻っていない状態ではありましたが、
「母子ともに危険な状態」になって帝王切開となる可能性は(高くは無いのでしょうが)かなり早い段階で覚悟していました。
ただでさえ「出産は富士山に2回登るくらい体力を使う」なんて言いますが、
徹夜の後に富士山に2回登れるかというと明らかに無理です。

そんな中、嫁が小刻みにけいれんのような症状を始めました。唇も青い様子。
部屋が寒いせいもあるだろうと暖房を付けたら、少し和らぎました。
素人には震えと痙攣の区別はつきません。

それにしても、この状態でもちゃんと昼ご飯を食べれる嫁は凄すぎると思います。
確かに昔「私はどんな状況になっても御飯だけは喉を通る」と言っていましたが…。

■破水
入院から11時間後、4度目の診察。
ここで初めて、助産婦ではなく医師による診察が行われました。
その診察(ちなみに診察には僕は立ち会えない)の時に、破水が発生。
破水というのは出産前に必ず起こるもので、むしろ破水するまでは子宮口が開きにくいのだそうです。
出産直前じゃない時に突然破水したりすると、強引に出産しなくちゃいけなくなるので大変なことなのですが、
今回のは健全な部類の破水。
医師によれば、これで陣痛の間隔が短くなるといいけど、という話でした。
子宮口はまだ3~4cmとのこと。非常時に備えて点滴の準備も行われました。

医師は嫁には詳しい説明を行いませんでしたが、僕がいろいろ質問することで、
嫁には聞こえない場所で(というのは意図的だったのかわかりませんが)教えてくれました。
あと4,5時間では難しいが、順調にいけば今日中には生まれる可能性が高いとのこと。
向こうの引継ぎで抜けやすいと思われる、嫁が昨日から寝ていないという話を伝えたところ、
陣痛が進まない場合は陣痛促進剤も検討しましょうとのこと。
もちろん医師は最初から、お産が進まなければ陣痛促進剤は使うつもりだったでしょうが、
その判断を早めにして欲しいのです。

破水後、陣痛の間隔は5回連続でちょうど4分と、明らかに短くなりました。
その後も3分半~4分程度に。痛みも明らかにこれまでより強くなっていました。
入院から12時間後、先ほどから1時間で再び診察。
なんと急展開で子宮口が6cmになっていました。

■いきみ逃し
この頃から「いきみ」の症状が発生。
ここでの「いきむ」というのは、妊婦が赤ちゃんを出そうとする方向に筋肉を動かすこと。
出産が近くなると妊婦は自然と「いきみたくなる」のだそうです。
いきんでしまうと体に力が入ることで子宮口が開きにくくなったり、赤ちゃんが出てきにくくなるようです。
ここで結構ハマる人がいるようなのですが、嫁は事前によく予習して知っていたので、一度もいきみませんでした。
悟りの境地に入り、陣痛が痛くても微動だにしない状態に。

■分娩
分娩というのは、赤ちゃんを産み出すこと。
入院から13時間後の診察で、ついに分娩室への移動が決定。
分娩室のルールは病院によって異なるのでしょうが、うちがかかった病院では、父親のみが立会可能というルール。
嫁が分娩室に移動してから約30分程度で僕が呼ばれました。
そしてついに助産師さんから「いきんでください」と言われる段階に。
ここでも嫁は背中を丸めた方が赤ちゃんが出てきやすいとか、コツを色々把握していたため、
すんなりスルッと出産!やっと!

すんなりすぎて、なんと別室にいた医師が立会に間に合わないという不祥事を発生させました。
そのせいだと思いますが、後に出生届に書かれていた出産時刻は
産まれた時に僕が見た時計の時刻より3分遅くなってましたw

結果を見てみると、最初の陣痛から17時間程度で産まれましたので、初産にしては平均的なようです。
但し眠かったこともあり、かなりの難産に思えました。
ちなみに出産と経験した人の多くが、自分は難産だったと思う傾向があるようです。笑

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