円周率3.14の掛け算
最近、「3.14×○」の計算を丸暗記させているご家庭が中学受験界隈に多いようです。(塾からそういう指導があるのでしょうか?)
- 3.14×2=6.28
- 3.14×3=9.42
- 3.14×4=12.56
- 3.14×5=15.7…
個人的には、円周率の計算は何度もやるうちに自然と覚えるというのは良いのですが、いきなり暗記するのは良くないと考えています。
理由をざっくりまとめると、
- 円周率の掛け算を暗記してしまうことで子供が計算の工夫を怠る可能性がある
- 円周率の掛け算が遅いのは、問題の演習量が足りていない(円の問題だけでなく掛け算の練習も足りていない可能性がある)ので、それを先に解決すべき
- 円周率の掛け算の暗記は円周率にしか使えないが、考え方を身に付ければあらゆる場面で役に立つ
- そもそも暗記しても大した時間の節約にはならない
といったところです。
計算の工夫はできていますか?
試しにこんな問題を出してみると分かると思います。
円の面積なんて忘れちゃったよーという方のためにヒントを出しますと、
円の面積=半径×半径×3.14です。
問題の答えと解説
では問題の答えです。
あまり良くない解き方
半径3の円の面積=3×3×3.14
半径4の円の面積=4×4×3.14
それぞれ4個ずつあるから、合計の面積は
3×3×3.14×4+4×4×3.14×4
=9×3.14×4+16×3.14×4
=28.26×4+50.24×4
=113.04+200.96
=314
良い解き方
半径3の円の面積=3×3×3.14
半径4の円の面積=4×4×3.14
それぞれ4個ずつあるから、合計の面積は
(3×3×3.14+4×4×3.14)×4
=(9+16)×3.14×4
=25×4×3.14
=100×3.14
=314
解説
工夫して計算すれば3.14を100倍すればいいだけの問題でした。なまじ3.14×9を暗記しているばっかりに、3.14×9や3.14×16をまとめずにそれぞれ計算してしまう子がいます。こうなると小数の掛け算を大量にやらされて、かえって時間がかかってしまいますよね。
そもそも円周率の計算は、3.14の部分は計算せずに取っておき、最後に1回だけやるのが最善の場合が多く、それが計算の工夫です。だから本来、円周率の掛け算の答えは丸暗記したところで大した時間の節約にはならないのです。
しかもこの考え方は、中学以降の数学で円周率をπ(パイ)と置く場合にとても役立ちます。
円周率の掛け算は、計算の工夫をするのにちょうど良い題材です。ここで工夫をしないと、他の様々な場面で使える計算の工夫を体得し損ねる恐れがあります。
円周率の掛け算の暗記は、計算を上手にやることと逆の方向へ働く力となり得ます。だから、冒頭にも述べました通り、円周率の計算は何度もやるうちに自然と覚えるというのは良いのですが、いきなり暗記するのは良くないと僕は考えています。
とはいえ、高学年になってから実際に目の前に円の問題が山積みになってしまうと、答えを暗記しなければどうしようもなくなってしまうのかもしれません。低学年のうちから掛け算を早くできるようにしておきたいものです。
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