偏差値を目標にしない方がよい理由
「今は偏差値50だけど、55を目指すぞ!」とか、「算数は偏差値60をキープしたい」とか、偏差値を基準に計画を立てたり物事を考えている人を結構見かけます。
個人的にはあまりお勧めしません。
というのも、偏差値というのは具体物が見えない数字だからです。
偏差値には具体性がないから目標にできない
例えば「算数のテストで100点中80点だった、次は90点以上を目指したい」というならば、これは具体物が見えます。20点の失点のうち、正解率の高い問題が10点分取れていれば90点だったわけです。だから目標と現実がどのくらい遠いかが目に見えますし、対策もできます。
しかし「算数のテストで偏差値50だった、次は偏差値55を目指したい」はどうでしょうか?
自分はどの問題ができてなくて、どの問題ができてたら55だったのでしょうか。あるいは、今後自分は何をすれば偏差値55になるのでしょうか。
偏差値で目標を立てても、その目標を達成するために具体的に何をすればいいかが全く分からないのです。
「偏差値50から偏差値55を目指す」だと意味が分からないのでダメですが、そのテストで何点を取れば偏差値55だったかを調べて、今回の自分の得点からあと何点プラスすれば偏差値55に届くかを計算するならば、偏差値を目標にすることができるので良いです。例えば65点で偏差値50、75点で偏差値55だったら、「あと10点取れれば偏差値55だったね、次はそこは目指そう」という話になります。
母集団が違うと意味がない
低学年のうちは色々なテストを受ける子も多いと思いますが、それだとテストごとに母集団が異なるので、それらの偏差値を比べても何も見えません。優秀な子が多いサピックスで偏差値50を取った後で、日能研で偏差値60を出したとして、どう評価すれば良いかわかりませんよね。
小4以降で通っている塾のテストを定期的に受ける場合など、同じ母集団で何度もテストを受ける時に、初めて偏差値の推移を考える意味が出て来ます。
他人と比べることに意味はあるのか
そもそも偏差値というのは、「他の人と比べて」自分がどれくらいできているかを示す数値です。
しかし勉強する順番は人それぞれ。どの科目から力を入れているかも違いますし、同一科目内でも基礎を固めている子、難問を解いている子、様々です。
人によって力を入れる順番が違う以上、その途中の状態で比べても、あまり意味は無いと僕は考えています。基礎から丁寧に習得すれば難問は後回しになるわけで、そうしたら基礎を固めたことで偏差値が高めに出る場合もあれば、難問をやっていないから偏差値が低めに出る場合もあるでしょう。算数の得意な子が総合で高偏差値になることもあれば、算数以外が苦手なせいで低偏差値になることもありえます。
テストはその子の定着具合を測るはずのものなのに、偏差値は問題運によって変わってしまうわけですから、こんなものに一喜一憂するのは本当に時間の無駄です。
テストで必要なのは、間違えた問題を解けるようにすることと、なぜ勉強したはずなのに間違えたのかを考えて勉強法を更新することです。テストの目的を考えたら、どこを正解してどこを間違えたか目に見える「得点」を見るのが一番正しいと僕は考えています。
ただし、6年生の中盤以降にもなれば、もう「途中の状態」ではなく全ての部分を一度は手を付けた状態になりますので、偏差値で物事を考えて良い場合が出て来ると思います。
偏差値と他の指標の使い分け
うちでは、得点>問題ごとの正答率>順位>>>偏差値の順で見ています。
偏差値を使う場合というのは、例えば
- 今回は点数が低かったけど、偏差値○○だから悪くはない
- 毎回点数がばらついてるけど偏差値で見たらそこそこ安定してる
とかそんな感じです。
例外としては、四谷大塚・早稲アカは偏差値64(63.5だっけ)からSコースに入るので、
- 組分けテストで総合偏差値64を取ってSコースに入りたい
といった目標ならば、子供のやる気に繋がるので良いと思います。
というわけで、これまでやってきた取り組みの成果を見る指標の1つとして偏差値を見ることは良いと思いますが、「偏差値○○を目指す」というのはあんまり意味がないと僕は考えています。
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