中学入試の国語・文章題の研究/文章量と中学の難度(偏差値)の関係

中学受験の国語の文章題に関する研究

中学受験で実際に出題された国語の文章題について、約150校を調査し、今回は文章題の本文に着目して情報をまとめました。

今回の調査では、入試問題は2018年度受験用 中学入学試験問題集・国語編、中学偏差値は四谷大塚の2019年度入試結果(80偏差値/追跡調査でその偏差値の生徒の80%以上が合格している偏差値)を使わせていただきました。詳細情報は一番最後に記載します。

中学の偏差値と本文の長さの関係

中学受験では一般的に、難関校ほど難しい問題を出題する傾向があると考えられています。

では国語の文章題の長さも、やはり難関校ほど長い文章を出題する傾向があるのでしょうか?

この疑問を解決するために、各学校ごとの偏差値と文章の長さ(行数)の関係を表にまとめてみました。結果は以下の通りです。

男子校の偏差値と国語文章の長さ

男子校では、偏差値と文章量はほとんど関係がありませんでした。強いて言えば、偏差値55~65近辺の学校でやや文章量が多い傾向があるようですが、それ以上の難関校では逆に文章量は減っており、難関校ほど文章が長いというわけではないようです。

共学の偏差値と国語文章の長さ

共学においても偏差値と文章量にはほとんど関係は見られず、偏差値の高い学校で長文が出ないケースもあるし、偏差値の低い学校が長文を出すこともありえる、ということが分かります。偏差値55~65近辺の学校でやや長文の傾向が見られるようです。

女性校の偏差値と国語文章の長さ

女子校においても、難関校ほど文章量が多いといったことはありませんでした。但しこれまでと異なり、女子校では偏差値の低い学校では文章が短めになっているという傾向が見られました。

中学受験全体での偏差値と文章量の関係

では最後に、上記の3つのデータをまとめたものをご紹介します。

結論:中学偏差値と文章量の関係

こうしてみると、やはり偏差値50~65近辺の学校で文章が長い学校が見受けられますが、偏差値65オーバーの難関校ではむしろ文章量は少なめであると結論付けるのが正しいでしょう。

問題文の長さは各学校ごとに特色があるようなので、自分の受験する中学に合わせて対策をするべきということになります。難関校を受けるからと言って必ずしも超長文を読む練習が必要なわけではない、とも言えます。

ちなみに最難関校は、文章の長さは短いですが、内容が難しくなっています。最難関校への合格を目指す場合、長い文章を短い時間で読む練習より、難しい文章を短い時間で読む練習が必要になってくると思われます。

おまけ情報

ちなみに偏差値65オーバーの難関校の具体的な中学校名は以下の通りです。

また、文章量が多かった中学は以下の通りです。

今回の調査は、あくまで学校の難度と文章量の関係を見ることが目的です。いちおう学校名も紹介しましたが、これらの学校が毎年同じ長さの文章を出題するわけではない点にご注意ください。

中学受験全体での平均文章量と男女の違い

今回調査した全ての問題での平均の文章量は、空白や改行を含めて6295文字(※)となりました。

男子校・共学・女子校別では以下の通りです。

学校別 国語文章の文字数
男子校 6371文字
共学 6472文字
女子校 6076文字

男子・女子で差は5%程度ですから、男女で文章量の差はほとんど無いと言って良いでしょう。

ここでの文字数は、1行24字詰めの文章の行数を数えて24倍したもので比較しています。実際は空白や改行を含むため、読むべき文字の量はこれより少なくなります。

男子校・女子校別の国語の試験時間

いっぽう国語の試験時間はこのようになっています。

ほとんどの学校で、試験時間が50分となっています。45分や40分の学校、また60分の学校もあるにはありますが、中学受験の国語の試験時間は平均して50分前後と考えてよいでしょう。男女の違いもほとんどありません。

なお灘は2日間に分かれているのでこの表では除外しました

中学受験の出題ジャンルと出題数

中学受験の国語の文章は、大きく分けて文学的文章と論理的文章に分けることができます。

では文学的文章と論理的文章は、どちらがどのくらい出題されるのでしょうか?

集計結果は以下の通りです。

出題頻度はほとんど同じであることが分かります。

ここでは、中学受験の国語の本文のジャンルの偏りを確認する目的で、簡単な分類とさせていただきました。本来は文章はもっと細かく分野を分けることができますが(物語、小説、紀行、論説など)、私自身があまり詳しくないため、今回はざっくり2つに分けています。

中学入試国語の問題文出題数

中学入試の1回のテストで出題される国語の文章の数の平均を調べました。

平均=1.95題

 

中学の難関度(偏差値)とは関係なく、どのレベルの中学でも、1つのテストで平均2題の長文が出題されます。より詳しく書きますと、文学的文章と論理的文章を1題ずつ、合計2題出題する学校がほとんどです。

極まれに例外となる学校もありますが、多くの受験生にとって、文学的文章と論理的文章はどちらも解く必要があると考えられます。

文学的文章と論理的文章では、設問の内容も変わってきますし、文章を読むときに意識すべきポイントも異なってきます。どちらかが苦手な場合は、早めに対策しておきたいですね。

まとめ:調査結果と戦略アドバイス

では最後に、今回の調査の結果と、そこから考えられる中学受験の国語の戦略をまとめます。

  • 中学の偏差値と受験問題の文章量には相関はほとんどありません。難関校だからと言って長文が出るとは限りませんし、四谷偏差値の低い学校で長文が出ることもあり、超難関校では文章量が少なめになるケースもあります。自分が受ける学校がどのくらいの長さの文章が出題されるのか、過去問で確認しておきましょう。
  • 男子校・共学・女子校で、文章量の差異はほとんどありません。文章を読む練習という点では、性別に関係なくどの学校の過去問も練習の役に立つと思われます。(但し今回は本文のみを調査しており、設問の内容については調査外ですのでご了承ください)
  • 全中学校で平均すると、だいたい1つのテストで2つの長文が出題されます、また、1つのテストでの合計の文章量は空白や改行を含めて6300文字程度です。文章1つあたり2500~3500文字程度の文章を2題出す中学が多いようなので、このくらいの量の文章を読む練習をするのも良いと思います。
  • 長文のジャンルは、文学的文章と論理的文章が1題ずつ出題されるケースが多いです。普段から文章が文学・論理どちらであるか見分ける癖をつけ、どちらか片方が苦手ではないか、普段から注意して見ておきましょう。

今回の調査結果は以上です。今後も中学入試問題の調査を進めていきます。

付記:データに関する注意

今回の調査で使ったデータに関する注意事項です。

  • 文章は「2018年度受験用 中学入学試験問題集・国語編」に載っていたものを使用しています。これは単に中古で安かったからというだけであり、データを分析する上での恣意的な理由はありません。
  • 中学の偏差値は、四谷大塚の2019年度入試結果の「80偏差値」を使っています。これは追跡調査でその偏差値の生徒の80%以上が合格しているという偏差値が書かれたものです。四谷大塚の偏差値は、SAPIXや首都模試と比べて、上位から下位まで幅広い中学の偏差値が比較的正確に出るという特徴があると考えられています。
  • 文章題の文章の前に、問題文に関する出題者による説明などがある場合、それも行数に含めています。
  • 設問の文章は行数に含めていません。但し極稀に設問の中に新たな別の文章が登場する場合があり、その場合は文章量に合算しています。
  • 文字数のカウントでは、行数のみを数えて24倍しています(上記問題集が1行24文字詰めのため)。セリフの後の空白や改行、段落分けによる空行なども、文字が詰まっているのと同じこととしてカウントされています。そのため、特にセリフの多い物語文などにおいては、実際に読むべき文字数はここに出ているより少ない場合があります。
  • 行数を数える際は、ある程度機械的に数えましたが、数え間違いがある可能性もあります。
  • 上記問題集は偏差値的には最上位から最下位までの学校を網羅してはいますが、簡単すぎる文章や、短すぎる文章しか出さない学校が恣意的に省かれている可能性も考えられます。本調査は全ての学校を対象にしているわけではない点にご注意ください。
  • また、今回は多年度にわたって調査したわけではありませんので、年度ごとのトレンドなどがもしあったとしても本調査の対象外となりますのでご了承ください。
  • この文章は3600文字程度と、平均的な中学受験の文章量よりは短くなっています。

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